2009年 02月 24日
「サザエさん」考 |
初期サザエさん。ヘアスタイルが際立ちます。
*サザエさんにハマる*
地下室の棚を片付けていたら、ダンボールいっぱいの
漫画「サザエさん」(姉妹社版)が出て来た。
何年も放置していたので、窓辺の湿気が入り込んだのか?
箱全体がしんなりしてしまっている。
あわてて本を取り出すと、カビはどうにか免れたものの
ページが波打ってしまっている。
大変、たいへーん!!と、いつものように独りで大変がりつつ
箱から出して…
さっそく常夏状態の元ボイラー室、現在の地域暖房引き込みルーム。
すなわち、洗濯干し場に運んで、真冬の虫干しとなった。
そこは庭の家具=ベンチ、テーブル、イスetc.の越冬スペースでも
あるので、座る場所がいっぱい、というより、そういうものがいっぱい!で、
洗濯を干す時に立ち往生する、ちょっと矛盾をはらんだスペースになっている。
立てないけど、座れるわけです。
それから2〜3日後。
いつものように洗濯物を干していたら
テーブルに広げられたサザエさんと目が合ってしまった。どれどれ…。
ベンチに腰掛けて小休止。ページをめくり出したら、もう、止まらない!
そのまま、両手に抱え込んで朝日の差し込むキッチンに持ち込んだ。
それから、さらに数日経ち、
今ではすっかりサザエさんワールドにハマっています。
全68巻(昭和20年代〜40年台)の内、飛び飛びで数巻脱落は
有るものの、ほとんど揃っている。
面白い事に10巻ごとで作者長谷川町子さんの手法が異なる。
表紙のタッチも違う。その時代時代の世相を反映していて、
興味は尽きない。日常生活を取り巻く環境の変遷も磯野家の
フィルターを通してみると、過ぎ去った頃が暖かい温もりをもって蘇る。
初期のサザエさんはモンペからスカート姿になっても、足下は”足袋”に”下駄”だ。
それが、時代と共に世情を反映しつつどんどん変化して行く。
新聞連載マンガならではの面白さだと思う。
デパートは度々登場するけれど、スーパーマーケットは最後まで登場しない。
魚屋さんや八百屋さんなどが、しっかり役割を果たしていて、
人々の住む町がコミュニティーとして機能している。
波平は酔っぱらって帰って来て、時々見知らぬ来客まで連れて来るし、
カツオ君はいたずらをしてはよく叱られる。拳固をもらって、コブをつくる。
家の女共は実に良く立ち働く。料理はもとより、季節の衣替えから大掃除、
洗濯に裁縫(サザエさんは裁縫好き。)その合間にしっかり映画も見に行く。
ワカメちゃんはとても不思議な存在だけれど、戦争というファクターを入れれば、
サザエ&ワカメ=姉妹も無理矢理成立可能だし、何としても
ワカメちゃんの女の子らしい挙動がかわいらしいから、
少々の矛盾なんて気にしない。
個人的には20巻代が内容、絵のタッチ共に一番好きだ。
作者がもっとも油の乗っていた時代だろう。楽しんで描いている
感じが伝わって来る。昭和29年〜33年の連載…ということは…?
私が丁度ワカメちゃんくらいの頃のお話。遥か昔のお話。。。
どうにか敗戦の辛さから立ち直って、貧しいけれど、家族が家族らしく
していた時代だった。
家に初めて電話が入った日は玄関先の小部屋において、
近所の人達も集まり、どこからか、かかってくるのをかたずを呑んで待っていた
記憶が有る。あれは、どこからかかってきたのか?電話局か?いや、父が
試しに外からかけたのかも知れない。ジリリ〜ン!と鳴ったときの歓声と、
私の興奮はまさに超ミニスカートでクルクル廻るワカメちゃん状態だった。
テレビは町内一番のお大尽の家にあるくらいで、それも普段はゴブラン織りの
カーテンで被われた、さながら劇場のように大袈裟な代物だった。
それが、皇太子様(現。天皇陛下)ご成婚や
東京オリンピックを期に普及し、磯野家のお茶の間にも登場するようになる。
漫画「サザエさん」を通して、熱狂的ともいえるネーションを思い出す。
確かにあの頃には”日本人”がいたなあ、と思う。
そういう私は古いのかしら?
長谷川町子さんの描いてくれた世界と昭和25年生まれの私とは
完璧に繋がっていて、彼女が掬いとって見せてくれた風景は
そのまま私の少女時代に重なります。そして、
ああ良い子供時代だった、としみじみ思います。
そんなことは多分単なるノスタルジックな感傷だけれども、
でも、そう思える自分がちょっと、うれしい。
漫画「サザエさん」は私の昭和史をひもといてくれました。
20巻台の表紙。色使いもデザインも楽しい!
後半はポップな表紙に。。。
by sundby
| 2009-02-24 21:57
| 本