以下は2007年11月7日のブログ「文化の違いってなあに?」の
言うなればプロローグのつもりで書いた文章です。
長々と本について書いてるし、ここに書いた本は今も愛読書だし、
本題である「文化の違いってなあに?」と切り離して
カテゴリ「本」にしてあげよう、と思う。
あの頃は写真をアップするというテクニックがなかったからひたすら文章。
アヤのこと、アパートのこと、書きたい事が沢山あったんだねえ、と
読み返してちょっと驚いています。おもしろい。
( 以下 原文のまま転載。)
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11月に入り、日増しに暗くなって来ました。
午後3時を過ぎると室内に明かりを灯します。これから冬至に向かって
ひたすら暗くなって行きます。長いトンネルに入って行く気分です。
外は冷たい雨だし…もういっその事、冬眠したくなるねえ…。
文庫本を手にいつもより早めにベッドに潜り込む。
さて、そんな夜には一体何を読みたいか?これが重要な問題です。
お気に入りの一冊を選びなさい。と言われたら、貴方なら何を
挙げますか?私ですか?私には只今「超」が付く程のお気に入りが
有ります。どのページからでも楽しめて、何度読んでも読み飽きない、
取って置きの一冊…それは
嵐山光三郎(著)「文人悪食」。
読み過ぎて擦り切れたスパイダーマンのカバーのかかった文庫本は、
女友達K-ちゃん(我が家のノラ猫K-ちゃんの名前由来の
オリジナル?人物)からのプレゼントです。
そう言えば、
武田百合子さんの本を最初に教えてくれたのも彼女でした。
丁度、拙著
「ヤコブセンの家ム桜日記」が完成した時でした。
薦められるまま「日々雑記」を読んだ後、私は「武田百合子さんを知らずに
いて良かった!」と内心胸をなで下ろしたものです。もしも、知っていたら、
彼女に影響されたか、意識しすぎて硬直してしまったか。どちらにしても
私ごときがノホホンと呑気に文章を書けなかった、と思ったのです。
それ程、彼女の文章は自由でしなやかで、時に可愛く。
それでいて強靱な精神を持った者だけが書けるだろう、と思わせる
強さを感じます。グイグイ読ませる!
K-ちゃんはいつもそんな感じで、私の(時々はタカシさんの)
ツボにスッポリとはまる、絶妙のタイミングとセンスで、本を選んで
送ってくれます。
長くなりましたが、「文人悪食」の面白さは、そのまま嵐山氏の
編集センスだと言い切れるほど、明治から昭和にかけての文人を、山ほどの
文献から分析解明し、筆者の巧みな文章で面白く味付けています。
読者は夏目漱石から池波正太郎に至るまでを、文中に出て来る食べ物や彼らが
口に入れて咀嚼したおびただしいモノ(食べ物に限らない)を通して、文人の
人と成りを知った気分になれるのです。
すばらしい着眼点です。それまで、嵐山光三郎=下駄履きの不良中年=
オヤジ的エッセイスト、と思っていたのは大間違いだったのだと知りました。
「お見それしました!アラシヤマさん」なのです。
蓋し、食べ物は語れる。
そう言えば、武田百合子さんは「富士日記」の中で、
ひたすらその日に食べた物を列記している。
私は武田泰淳の本を一冊も読んでいないのに彼が「ホウトウ」を好きと
知って微笑んでしまう。おまけに彼らのご近所に住む大岡昇平さん家の
ご馳走まで覗いてしまったのだけれど、「文人悪食」にはこの両氏も
チラリと顔を覗かしていて、その辺もとても魅力的です。
つい長くなりました。
それでは、今夜もスパイダーマンがへばりついた本をベッドのお供に
お や す み な さ い。
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日曜日から夏時間。
外は春うらら。。です。
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